思わず口にすると、必ず

うちの台所には荒神様をお祀りしてある。おばあちゃんの部屋には仏壇と神棚。毎日お線香をあげる。

ある時、台所で丁度ラップが無くなって、「ああラップが無い!」と言った日に、銀行へ行くとその頃は窓口で継続とかの手続きで景品をくれる最後の時代で「こんなものしかありませんが」とサランラップをもらった。

ある時、なんと米びつが空で「お米が無い!」と言ったら、1、2時間後、ピンポーンと宅急便がお米を持ってきた。たまたま親戚が送ってくれたのだった。

しかし、私がつい口から出た声を背後で聞いておられた方がいたような気配を感じて、恐れ多くてそれからは口に出しては言わないようにしようと決心したのだった。

 

それから10数年経ったが、先日のこと。

おばあちゃんの部屋に義妹がたまたま泊まって使った毛布がとても暖かかったので、歳末セールの時にデパートで買いたいと言った。私は、押入れには何枚かあるはずだから持って行って使えばと言ったのだが、見つからなかった。昔の毛布は厚くてとても温かいものが多く、香典返しなどでそういうものをいただくことが多かったので、何枚か仕舞ってあったのだ。しかし、最近は香典返しもギフトブックばかりになり、そういう本だと綿毛布やシルクなど軽いものがメインであまり見かけなくなったように思う。

和室の仏壇と神棚の横の押入れを前に、義妹が「うちにはこんなに暖かい毛布なくて、買おうと思って・・」と話していたのだったが、それから数日後。

宅急便で大きな荷物が届いた。昨年末に亡くなった親戚の香典返しだった。厚くて暖かそうな毛布が2枚届いた。うちの息子が一枚をもらった。その二日後に義母宛に香典返しが届いた。こちらも同じく暖かい毛布だった。義妹夫婦の分がちゃんと揃った。

「うちには毛布がないんです」って言ったのが聞こえてしまったよう。